海外技術調査団に参加して(パレスチナ)

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技術士ひょうご

技術士(電気電子部門)  福井 英雄  (essei2010_75)
一昨年の7 月からこの一年間、パレスチナ、レソト、マラウィ、ルワンダの4 カ国を巡る調査団に参加してきました。海外業務研究会に参加し、自己の経歴の書き方などをまとめているうちに、森副会長の紹介で、未知の未来への不安を抱きながらも、挑戦を受け入れました。十分な準備もなく、調査団に参加して何をすべきかよくわからないまま、なんとかやり遂げてきました。この経験について、順次紹介していきます。まず最初の挑戦は、リベリアでした。

1.リベリアの案件に挑戦

昨年の5 月にJICA から「リベリアの配電設備計画」の案件が出た。簡易プロポーザルの書類(JICA の書式)をまとめて提出。もし採用されれば、すぐに出発しなければならないため、必要な予防接種である黄熱の接種を神戸検疫所で急いで受けた。間もなく、返事があり、「応募要件に及ばず」の結果であった。

2.パレスチナの調査団に初挑戦

 ある日突然、携帯電話がなり、パレスチナに行けますかとの依頼がありました。これはJICAの案件で、M建築設計事務所が電気関連の専門家を必要としたためです。初めてパレスチナの話を聞いたとき、あまり良い印象は持っていませんでした。危険な場所ではないかと不安がありましたが、ガザ地区ではなくヨルダン川西岸地区だと聞いて、比較的安定していると分かりました。JICAの女性スタッフから、夜でも女性が安全に歩ける場所だとの情報を受け、不安が和らぎました。7 月14 日、関空から出発。仕事で海外へ行くのは30年ぶりのことでした。以前は会社から見送りの人がいましたが、今回は一人での旅行でした。出発前に海外旅行保険に加入し、メールで送られてきたeチケットでチェックインしました。仁川空港で成田からのチームメンバーと合流し、安心しました。テルアビブ空港へ向かい、そして深夜にパレスチナのラマッラ市のホテルに到着しました。夜の街にアラビア語の看板が目立ちます。何十年か前にリビアに行ったときの雰囲気を感じました。早朝、4時に拡声機からのコーランの祈り声で目が覚めました。

3.パレスチナ[Palestina]について

 ニュースで断片的に聞くだけで、詳細情報は地図の位置すら知りませんでした。 (写真1)「パレスチナ」は、イスラエルの建国以前は、現在のイスラエルとパレスチナ自治区の両方を含む地域でした。1948年以降、この用語は現在のパレスチナ自治区を指すことが一般的です。しかし、その後もイスラエルによる占領拡大によって、その領域は変化しています。その変化を実感したのは、アパルトヘイト・ウォール、または隔離壁や分離壁とも呼ばれる壁でした。イスラエルは「テロリストの侵入を防ぐため」と主張して、ヨルダン川西岸地区にこの壁を建設しています。この壁は、3メートル以上のコンクリートブロックで、パレスチナの領土に侵入し、パレスチナ人の土地を奪いながら建設されています。 (写真2)

4.北部の村・ヨルダン川西岸地区の配電網改修調査

  ラマッラから車で約1時間、高速道路を北へ進んだところに、調査対象の2つの村があります。死海の横を通過すると、驚くことにここは海抜-400メートルの地点です。村長の家に招かれ、話をする前に食事をいただきました。アラビア語での会話ですが、英語の通訳がついていました。しかし、私は何を言われているのか50%も理解できませんでした。その後、村の配電網を案内してもらいました。約25年前に建設された低圧配電網で、裸の電線が複雑に絡み合っている箇所があります。低圧分岐盤の小屋の中では、分岐盤のカバーがなくなり、新しいブレーカーが取り付けられたままでした。驚いたのは、ブロック積みの家の工事が進行中でありながら、その上に電線が通っており、工事が中断していることでした。 (写真3)

5.西欧規格の配電線網

 この地域は西欧規格の配電網を使用しており、中圧配電は33kV、低圧配電は400/230V(3相4線式+街路灯用)です。接地方式はT-N方式で、末端で接地極を使用しません。一方、日本ではT-T方式を採用し、末端の機器に接地極を設けています。以前は、低圧配電線は裸線を4本(または5本)張っていましたが、最近ではABCケーブルが使用されています。電気料金の徴収方法も異なり、プリペイド方式の電力量計が設置され、プリペイドカードを挿入して使用します。村のセンターで子供たちがカードにチャージをしている光景も見られました。

6.エルサレム旧市街

ラマッラから車で南へ約20分のところにエルサレムがあります。ここはイスラエルの領域です。タクシーのナンバープレートには2つの種類があり、パレスチナとイスラエルのどちらにも行けるものと、パレスチナから出ることができないものがあります。エルサレム旧市街はユダヤ教、キリスト教、イスラーム教の聖地です。(写真4) JICA事務所からは毎日、治安情報がメールで各人に配信され、多くの人が集まる日には近づかないようにとの指示が出されます。

7.まとめ

帰国後、電力分野に関する現状報告と今後の方針をまとめました。正式な報告書は建築設計事務所が作成します。帰国報告および設計方針の会議はJICA本部で行われました。私は初めての参加で、現地との衛星中継TV会議でした。こちらは夕方でしたが、現地は朝でした。初めての経験で、さまざまな驚きがありました。業務の上ではあまり貢献できたとは思わなかったが、今後のための貴重な経験でした。次回は、マラウィとレソトに関する報告を行いたいと考えています。